なぜ今『魔女の家 MV』なのか
フリーゲームとして公開された『魔女の家』(2012)は、
理不尽な即死トラップと不気味な洋館、そして後味の悪さで強烈な印象を残したホラーADVだ。
その「想像に委ねられた物語」を、
あえて補完し、確定させた作品――それが『魔女の家 MV(Modern Version)』(2018)である。
本作は単なるリメイクではない。
プレイヤーに解釈の余地を残さない、非常に残酷な完全版だ。
フリゲ版『魔女の家』とは
フリゲ版の最大の特徴は、説明の少なさにある。
- 明確な目的説明はほぼ無い
- 登場人物の心情は断片的な日記や演出のみ
- エレンとヴィオラの関係性も曖昧なまま進行する
だからこそ、
プレイヤーは「考えながら」進めることになる。
結末を迎えても、
本当にこれで良かったのか?何か見落としていないか?
というモヤモヤが残る。
この消化不良感こそが、フリゲ版の魅力だった。
『魔女の家 MV』とは何が違うのか
MV版は、その余白を徹底的に埋めに来る。
主な変更点
- グラフィック・演出の大幅強化
- 場面ごとに感情を誘導するBGM
- 追加イベントによる心理描写の補完
- 複数エンディングとクリア後要素の追加
特に大きいのは、
キャラクターの内面が明確に描かれるようになった点だ。
フリゲ版では「察するしかなかった部分」が、
MV版でははっきりと示される。
フリゲ版とMV版の違いまとめ
| 項目 | フリゲ版 | 魔女の家 MV |
|---|---|---|
| グラフィック | シンプル | 高解像度・演出強化 |
| 音楽 | 必要最低限 | 場面ごとの専用曲 |
| 演出 | 急に殺しに来る | 不穏さの積み重ね |
| 物語の説明 | 断片的 | 補足イベントあり |
| キャラ描写 | 想像に委ねる | 心情がより明確 |
| エンディング | 実質1種 | 複数END+後日談 |
クリア後に分かる“本当の物語”(※ネタバレ)
エレンという存在の変化
フリゲ版のエレンは、
冷酷で計算高い“純粋な悪”にも見えた。
しかしMV版では、
彼女がそうなるに至った背景や歪みが描かれる。
結果として浮かび上がるのは、
悪だから悪なのではなく、
そう生きるしかなかった存在
という救いのなさだ。
同情できるかどうかは別として、
彼女を単純な悪役として片付けることはできなくなる。
ヴィオラの立ち位置
MV版のヴィオラは、
ただの被害者では終わらない。
彼女が「選ばなかったこと」
「気づかなかったこと」が、
静かに悲劇を確定させていく。
ここにあるのは善悪ではなく、
立場と選択の非対称性だ。
追加エンディングの意味
MV版の追加エンディングは、
救済ではない。
むしろ、
「これが全てだ」と突きつけるための装置
希望を与えず、
解釈の余地も残さない。
だからこそ、
フリゲ版を知っている人ほど心に来る。
総評:MV版は誰におすすめか
おすすめできる人
- フリゲ版を遊んだことがある(フリゲ、ホラゲが好きな人)
- 考察や心理描写が好き
- 後味の悪い物語に価値を見出せる
合わない可能性がある人
- ホラーグロが苦手な人
- 想像の余地を大切にしたい
- ホラーにカタルシスを求める
結論
『魔女の家 MV』は、優しさを削ぎ落とした完全版だ。
そしてその残酷さこそが、この作品の最大の魅力でもある。

